少年のアビス / 峰浪りょう 1巻 感想

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主人公の黒瀬令児は地方の田舎で四人暮らし。認知症の祖母とヒステリックな引きこもりの兄。父は居なく、学校に行きながら母親と祖母の介護をする毎日。進学はせず、家のために働くつもりでいた。

令児には幼なじみが二人いた。アイドルオタクのチャコと、町の不良、玄。玄からはパシリ扱いで、しょっちゅうタバコを買いに行かされている。

チャコから教えてもらったアイドルグループにはまっていた令児。ある日コンビニで、チャコ、令児ともに推していたそのグループの女の子、青江ナギが働いているところに遭遇する。

タバコをふかす青江ナギ。その雰囲気に飲まれる令児。話していくうちに少しずつ打ち解け、ナギに、不慣れなこの町の案内を頼まれる。

近くに流れる川の上流に、情死ヶ淵という場所があった。とある小説の聖地で、恋人同士が心中したという逸話がありこう呼ばれていた。その川を見ながら、ナギは令児につぶやく。

「ねえ令児くん 私たちも今から心中しようか」

【感想】

独特な雰囲気で織りなすボーイミーツガール。ただし、恋愛というよりはそれぞれの境遇から逃げ出したい二人の逃避行。

地元に縛られ続ける主人公、令児が毎日の生活に蝕まれていく中で、唯一の救いのような存在として現れたのがナギ。物理的ではなく、心理的な逃避行。

令児は逃げ出したくても家族を「生きる目的」としてこれまで生きてきました。でも母親がもう限界を迎えてきて、挙げ句令児を地元のヤクザまがいの会社に入れ安泰を願おうとします…。
色々なものが令児にのしかかり、いよいよ…といったところでの出会い。

ナギは特段死にたい理由があるようではない、でも、生きてる理由もない、と言います。ここはまだ掘り下げがありそう。

単純に心中してお終いか、と言えばそうではなく、ナギの住まいで会う男性や令児の幼なじみの二人など、令児とナギを動かせる存在がしっかり居ます。1巻時点では害でしかないのですが。
チャコはまだ、令児を思っているし良い子なので救いです。ただ、悪気なく令児にダメージを与えてしまうあたり、とことん令児がツいてないなあという印象…。

後半、令児とナギ、二人になると当然閉塞的な世界で話が進み、そんな雰囲気のまま次巻へ続きます。

こういった雰囲気で読ませる若者の話は、胸が詰まってあまり気分の良いものではないのですが、それでも二人の行く末は見守りたくなります。どうか二人が納得のいく結末を迎えてほしいです。

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