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実家を離れ、東京でスポーツインストラクターとして働く花ノ木茶子28歳。ことあるごとに「女はこうあるべき」と周りから押しつけられ嫌気が差していた。
婚約者の実家へ挨拶に行った際、またも女としての役割を押しつけられそうになり、彼の強引さも相まって逃亡。終いにはホテルまで付いてこられ、どうすることも出来なくなり逃げるように実家に帰ることに。
実家は茶農家。兄が居るはずの実家。久しぶりに帰ると、知らない子供と知らない男性が。
聞くと、子供はふたばと言い、兄の子で、男性は一心と言い、物書きの兄のサポートのため茶農家を手伝いに来ているという。
兄の妻は亡くなっており、ふたばの面倒も一心が見ていた。
不躾で口の悪い一心に不信感を露わにする茶子だが、ふたばが懐いてしまったため仲良くする振りをしながら実家での暮らしを続ける。
そんなある日、婚約者が実家まで追いかけてきたのだった。驚いた茶子は咄嗟に、「一心と結婚した」と嘘の叫びを上げその場をごまかそうとする。状況を察した一心は話を合わせ、婚約者を追い払った。
その咄嗟の叫びは周りに知れ渡り、ふたばもその気に。二人はぎくしゃくしながらも、結婚をした体で生活を供にすることになってしまったのだった。
【感想】
「おっさんずラブ」の著者さんの新作。女であることをことごとく押しつけられてきた主人公の出戻り物語。
少し気の強めな主人公、茶子。喜怒哀楽が激しく、良い人ですが少しバタバタしているなあという印象の性格。見ている分には面白いです。笑
一心、ふたばと出会い、実家での新生活がスタートするところから。一心は強面で無口、口も悪く愛想もないので確かに初めはとっつきにくいですが、よく見ていけばすごくしっかりした男性。ただ、茶子には少しキツい面もあり、それが気に食わない茶子とは中々上手くいかない様子。
しかし婚約者を追い払った事件をきっかけに、嘘の夫婦を作り続けなければならなくなり、事態は急展開しある意味安定します。
ふたばに気を遣わなければならないので、二人は子供のためになんとかやり切ろうと頑張りますが、生活するにつれ徐々にお互いの良いところを知っていく、というやはり王道な展開。
この子供の存在が面白いです。少しませた子なので、二人のやりとりを面白がる傾向もありつつ、二人と離ればなれになるのは嫌だと泣いてしまうあたりもかわいい。この子のおかげで二人は結ばれる(はず)のですから、キューピッドですよ。
また、茶農家を継ぐのが家系とは関係のない人物で、実際の兄は副業である物書きで何とか現状を食いつないでいるということ。それでも経営の厳しい茶農家を、結婚さえして一心を繋げばなんとかなるという、ある意味茶子にとって八方塞がりな設定。これがすごく良い。
御膳立てされたような状況ですが、茶子と一心の関係もなんだかんだデコボコのいいコンビ。途中でかませのような幼なじみも現れますが、二人の関係はもう圧倒的に固まっていますのであまり障害にもなりそうになく、閉塞的なラブコメとして十分楽しめそう。
ちなみに狭山茶を取り扱っているので、舞台は狭山。郷土感も良い雰囲気ですね。おすすめです。
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