ジャンケットバンク / 田中一行 2巻 感想 【ネタバレあり】

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「気分屋ルーシー」の最終局面。外れを引き鍵返却のダメージを受けた獅子神をよそに、真経津は自分のハートの入った箱を解錠する。

真経津は始めからイカサマなどしておらず、全ての鍵穴に当たりを設定していた。
真経津のイカサマを信じ、獅子神は自分の設定した当たりを選び続け、結果、真経津に当たりの位置を教える形になってしまっていた。このゲームは、真経津の圧倒的勝利で終わる。

正式に特別審査課への異動手続きに入る御手洗。この部署では「キャリア(勤続年数)」が全て。しかし、そのキャリアは他人と奪い合えるものだった。

キャリア一年分の特別融資を受けた御手洗。宇佐美の班である四人と出会い仕事に加わるが、同僚との情報交換は全てキャリアとの交換で行われる。キャリアを積むことが、この課でののし上がり方だった。
また、真経津に惹かれこの課に入った御手洗だが、ギャンブラーに担当としてつく通称「ジャンケット権」はキャリア五年分が必要だった。

ジャンケット権を得るためにキャリアが必要な御手洗は、先輩であるしいなと、真経津の勝敗の賭をした。そして、真経津の次の戦いが始まる。

ゲームは「サウンドオブサイレンス」。1vs1で行われるカード当てゲーム。対戦相手である村雨は医者であり異常者。初戦から真経津は村雨に欺かれ、ゲームの罰を受ける。二戦目、三戦目と、村雨の勝利は続く。御手洗をパートナーとしている真経津だが、その御手洗が敵に塩を送っている状況だった。
しかし、劣勢の真経津からは笑みがこぼれる。この状況は、真経津が仕組んだものなのか。罰により聴力は機能せず、身体的にボロボロの真経津だが、この最終局面、果たしてひっくり返すことが出来るのか。

【感想】

2巻も面白いです。ギャンブラーと銀行員のダブル主人公で展開される緊迫した物語。

オリジナルゲームもルールは単純で読者も飲み込みやすい。本当の駆け引きが楽しめます。真経津が苦戦している村雨との対戦については、ここまでは相手の動作を読みとるという部分のみで進んでいるのであまり芸はないのですが、真経津の何を考えているのかわからない不気味さが後半はすごい。
劣勢かと思いきや、この劣勢が勝利のための布石なのだとしたら…。1巻もそうでしたが、次巻へのつなぎ方があまりにヒドいというか上手いというか…続きを読ませる常套手段ですが、すばらしい。

真経津のギャンブルバトルも面白いのですが、同時に進められる御手洗のギャンブルもひっそりと見応えアリ。まさか銀行員側でも駆け引きが発生する設定とは。御手洗は普通の男の子のようでいて、既に異常性を隠しきれていません。数字に関する計算力・洞察力は並外れていますが、それ以外は平凡。それでも真経津に惹かれ、怪しい地下で活動する課に所属する時点でイかれているわけで…。

ギャンブルものは世の中に溢れてしまっていますが、大概外れは少なく、面白い。しかもこうやって主人公を二人置くなど捻りがあると、更に良いですね。

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