ファイアパンチ / 藤本タツキ 5巻 感想 【ネタバレあり】

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トガタを追うアグニ。心を見られたトガタは、動揺していた。体は女だが、心は男。そのことに300年間、ずっと悩まされてきていた。

心の傷に触れられたショックでその場を離れるトガタだが、アグニの説得で戻ることに。
そしてアグニはドマへけじめを付けにいく。

ドマの元へたどり着いたアグニだが、ドマは既に隠居生活を送っていた。養う子供が17人。親代わりに働き、魚を釣っている。
かつてのドマは、ベヘムドルグによって洗脳されていた。神が活躍する映像を見せられ、その気になってしまっていた。そしてその映像こそが、映画だった。

許しを請うドマ。子供達はドマを庇う。それを見たアグニは、復讐を諦めた。もう自分には、ドマを殺せないと悟った。

帰り道、ドマに襲われた記憶が蘇る。心の中のルナが呼びかける。このままでいいのか、ドマは演技をしているのではないか…。
気付いたとき、目の前には焼け焦げたドマと全焼した小屋がそこにはあった。

悪は自分だと悟ったアグニは、自ら湖に落ちる。走馬燈が流れる中、気付くと目の前には、トガタがいた。

アグニを湖から助け出したトガタは、既に炎に包まれていた。死の間際、トガタは様々な思いを寄せる。300年生きた命、最期のセリフ、どうしようかと。「お母さん」これでいこうと。視聴者も共感するでしょう。確定だ。…アグニの顔が目に映る。全て、納得した。最期のセリフは…。

トガタを亡くしたアグニ。絶望の中、歩くとそこにはユダの木が。アグニ信者たちは既にユダの養分とされ、自称氷の魔女はアグニを言葉で追いつめる…。

【感想】

これはすごい展開となりましたね…まさか死なないトガタが死ぬとは。
最期の独白シーン、生きる意味というよりももっと深い感情を教えてくれる印象的なシーンとなりました。

死んで気付きましたが、トガタというキャラクター、意外と好きだったんだなと。最後の最後で弱い部分、人間らしい部分が見えて、本当の最期は美しかった。
映画好きな作者ですが、この辺りは映画を見ているような錯覚さえありました。素晴らしいです。

ドマへけじめを付けにいったアグニですが、心の奥底の悪魔に憑かれたよう。
森で鹿穫って子供と暮らすおっさんが復讐相手って、この構図もまあ変わってますが、全てはこの理不尽な死の演出でしたね。
罪のない人たちすら無惨に殺していくアグニは悪役そのもの。自覚がないので、それはまあ自己嫌悪どころではないです。
精神がいくつあっても足りない。更にトガタの死。続けてユダの木と自称氷の魔女。
アグニの人生がハード過ぎてツラいですね。

アグニの復讐もトガタのエピソードも、区切りがつきここからは更に大きい敵との勝負。
この作品はまだまだ見せてくれそうです。