スタンドUPスタート / 福田秀 2巻 感想 【ネタバレあり】

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急成長を続けるイベント会社「エンジョイ・メーカーズ」を経営する東城社長は、権力と金に溺れ、傲慢の限りを尽くしていた。創業当初からのパートナーも見限り、自分の力を誇っていた。しかし、好調だった業績は競合に敗れ落ち込み、コロナによるイベントの中止などで会社は窮地に追い込まれる。そこへ現れたのは三星太陽だった。

太陽は、東城のパートナーである福島と手を組み、東城の会社を買収した。
社長としての大きな重圧に耐えるためには、力を誇示するほか無かった東城。その気持ちは行き過ぎ、「社長」という肩書きが東城を蝕んでいた。そこへ、太陽は救いの手をさしのべる。

エンジョイ・メーカーズは倒産。東城は太陽に連れられ田舎にいた。そこで福島の会社の経営状況が良くないことを知る。田舎の商店を見てアイデアが閃いた東城は自らの企画を太陽に提案。そして、社長として悩んでいる福島の元へ、東城は再び足を運ぶのだった。

ダメな男に尽くす元事務員のキャバ嬢。周りからは白い目で見られているが、本人は好きでやっているだけと気にしていない。ある時、同僚のキャバ嬢が昼の仕事に就きたいがスキルがないという話になり、元事務員の経験を生かしてお金をもらって教えることに。全ては彼氏のため…と思い夜の仕事をしてきたが、同僚の手助けをしているうちに本当に自分がやりたいことは何だったのか、少しずつ分かってきた。
そしてナイトワーカー向けの転職サポートをすることにした彼女は、ダメな彼氏と決別し新たな一歩を踏み出すのだった。

起業家サークルで起業を目指す大学生。口振りと計画書は達者だったが、太陽が「出資するから起業しよう」と言うと途端に怖じ気付いてしまう。周りの友達が軽いノリで起業しようとすることが信じられない。彼は、「起業を目指す若者」までで満足しており、本当にやりたいこと、起業へのエネルギーが不足していたのだった。

大手企業の部長職を経て、定年退職をした男。家での時間が増え、仕事以外の趣味も中々ハマる物がなく、家族に目を向けていなかったことから妻には愛想を尽かされ、空虚さを感じていた。
仕事で付き合いのあった林田に、俺を雇わないかと声をかける。林田は厄介に思いながらも、音野と太陽に声を掛け、音野が経営するシニア向けマンション管理の会社を紹介した。そこで改めて仕事に向かい、やりがいと生き甲斐を感じるが、音野と話すうちに、自分ははただ「会社」と「役職」いう冠が欲しかっただけなのだと気付く。
その後は気持ちの離れていた妻とも和解し、心機一転、夫婦生活を始めるのだった。

タクシーの運転手を始めて35年。様々な客を乗せてきた男性。ある時、太陽を乗せた際に、太陽からせがまれ怪談話をすることになる。その怪談が思いのほか良く、このタクシーは男性のステージだと豪語する三星。「タクシーの運転手」という仕事は下に見られている、と落ち込みがちだった男性だが、自分の仕事に誇りと自信を取り戻した。その後は怪談を披露する珍しいタクシーとして、ファンも付くほどになった。

太陽と東城はある男に呼ばれる。エンジョイ・メーカーズ時代、取引先だった男性。ジムを経営しているが、先行きが怪しいという。そのため太陽に相談するが、太陽は勝負に勝ったら出資すると言う。男は必死に勝とうとするが、そもそも勝負の方法を間違って思いこみ、太陽に負けてしまう。まずは思いこみを捨て全力で考えることが必要だと説く東城。太陽は東城を男性の会社に招き再建に携わらせ、会社は少しずつ良くなっていった。社長として、一人で決断しなくてはいけないことは多々あるが、味方が居ることは忘れてはならないと太陽は言った。

太陽の兄、大海。大手企業の社長を勤めるが、部下が不祥事を起こしてしまう。6人いる副社長全員を解任すると決断した大海。その通達は、副社長と懇意の者を人事責任者に昇進させ、行わせた。人事責任者となった男性は壊れ、副社長からはバッシング。大海はルールとシステムを重んじる。人を信じ、自由にやらせるやり方では会社は成り立たないと断言する。非情なまでに、大海は会社存続のための舵取りを行っていた。しかし、その決断の重圧は大海にも重くのしかかっていたのだった。

【感想】

太陽の救済物語2巻。起業をテーマに、今回も社会人に響く上質な話ばかりでした。

1話完結が多めで、それぞれどこか迷走しているキャラクターがメイン。そんな人たちに導線を引いてあげるのが太陽。

太陽の明るい性格と、他者を否定しない前向きさ、ポジティブさには読者も救われると言いますか。誰でも良いところ悪いところ、成功や失敗があってしかるべきと言ってくれているようで、何だか許された気持ちになります。
説教臭くなりそうな題材で、全くそうならないのが素晴らしい。逆を言えばフィクション感が強くもありますが、でも漫画はこうであって欲しいなあ。

若い人の幼さから、おじさんの苦悩まで、色んな角度から働く人を描いています。起業の具体的なアイデアを織り交ぜつつ、人間ドラマもしっかりある。良くできてるなあと思います。面白い。

欲を言うと、1話完結だと少し駆け足に感じる部分もあり、それぞれ2話完結くらい引っ張ってもいいのかなあと思います。
タクシーの運転手の話はむしろ1話完結で良かったですけど、他のエピソードは1話で終わりにするにはもったいないというか、少しあっさりめに感じました。最初の東城の話も、福島とうまくいくシーンを入れて欲しかった。もう1話くらい読みたかったなあという。

ただ特に苦言を言うほどのものではなく、お仕事漫画としては十分面白いです。大筋としてある、太陽と大海の関係も見所。大海は仕事は出来るけど不器用なのかな…という悲しさ。最後まで見守りたい。タイプは違えど信念は同じ二人がこれからどう物語を動かすのか楽しみ。

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