明日、私は誰かのカノジョ / をのひなお 1巻 感想

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彼女代行サービスでバイトとして働く女子大生、雪。子供の頃に両親から虐待を受けており、今は一人で生活費と学費を稼いでいる。
顔にある火傷の痕のせいで子供の頃からいじめられ、普段は化粧で隠しているが大きなコンプレックスとなっていた。

ある日、客として若いサラリーマンの壮太と出会う。壮太は雪の美しさ、儚さに惹かれ次第に好きになっていくが、雪はあくまで仕事として割り切り交流を続けていく。

【感想】

心と体に傷を負っている女子大生の生き方を描いた作品。1巻では雪という主人公がメインです。次巻予告では別のキャラが描かれていたのでオムニバス形式のよう。

子供の頃から辛い目に遭ってきた雪と、何不自由なく暮らしてきた壮太とのギャップが何より痛々しく描かれており、きっと様々な読者に気付きを与えてくれるのでは、と読みながら思いました。

 

明日、私は誰かのカノジョ 1巻

雪の心情の表現はかなりリアルで、独白のようなシーンが多々ありますがどれも胸が苦しくなるような思いばかりで読んでる側が辛い。

壮太はとにかく雪を好いて力になろうとしますが、壮太にはどこか中途半端な正義感があり、雪にはずっとそれが引っかかっているのでしょう。
基本は仕事として接する雪ですが、時折、本当の笑顔やリアクションを見せるシーンもあり、あれ意外と…?と思うこともありました。
都合の良い夢を見るシーンも、本当に望んでいるからこその描写で、だからこそ、雪の心を埋めることはこれからでも遅くない。
そう思わせながら、壮太が寄り添おうと決心してからの、雪の行動と結末。1巻完結でいいのでは?と思う完成度でした。

 

明日、私は誰かのカノジョ 1巻
明日、私は誰かのカノジョ 1巻

作品全体に重苦しい雰囲気が漂っていて、良い意味で言えばリアリティが高く読み応えがあり、悪く言うと単純に暗いです。
ただこの雰囲気を確立させているというのは間違いなくプラスで、一層作品世界に引き込まれます。

雪の気持ち、壮太の気持ち、それを俯瞰する読者、それぞれの視点でしっかり読めます。物語に沿って心情を描くのがとても上手だなと感じます。
次巻は全然別のキャラのようですが、タイトル通り「誰かの彼女」としてまた不器用で切ない物語になるのでしょうか。好みとは言いづらいものの、妙な説得力と世界観を感じる良作でした。

 

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