メタモルフォーゼの縁側 / 鶴谷香央理 1巻 感想

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今年75歳になる市野井雪。ふらっと入った本屋でたまたま目に入った漫画を衝動買い。家に帰って読んでみると、男同士がキスをする展開に。子供の頃以来何十年と買っていなかった漫画だったが、久しぶりに読んだ漫画がBL漫画だった。

続きが気になり本屋へ注文。そこでアルバイトの佐山うららと出会う。うららもBL漫画が好きだったが、恥ずかしくて周りには隠している。引っ込み思案で友達も少なく、誰かと好きな漫画の話をしたいと思っていた。

お店で会話をするうちに打ち解けていく二人。雪の家に遊びに行ったり、好きな漫画を貸し借りしたり。共通の趣味を通して、二人は仲良くなっていく。

【感想】

女子高生とおばあちゃんの、BL漫画を通した優しい繋がりの物語。お互い、誰かと話したかったという欲をぴったり埋められる関係になり、これはとても良い出会いだなとほのぼのします。

おばあちゃんである雪はBLはそもそも、漫画自体超久しぶり。BLという存在も知らなかったからこそ、純粋に楽しんでいて後ろめたさなんてまるでなく。
対するうららはよくいるオタク系の女子高生。引っ込み思案ですがしっかりはしていて、コミュニケーション力もありますが自分から行くのは苦手なタイプ。BLは好きですが恥ずかしくて隠しています。

うららには幼なじみの男の子がいて、こちらは割とイケイケ。でも悪い意味ではなくイイヤツで、うららとも若干の交流があります。高校生はほんと、人間関係で差が出始めるタイミング。少しずつ放されてく構図はうららの心のどこかにもやもやを植え付けていきますが…うららの本心はどうなのでしょう。

淡々と物語は進み、登場人物の内面はあまり描かれません。それでも独り言だったり会話を通じてキャラクターの深みは出ていて、雪が漫画を楽しんでいるところや、うららが雪を誘えて嬉しがってるところなど、心からこちらも嬉しくなるような、感情移入度の高い作品だなと思います。

好きなことを共有できるってのは素晴らしいこと。そこに年の差なんて関係ないですし、実際話していれば関係なくなっていくと思います。BLにしろなんにしろ、共通の趣味を分かち合えるというのは良いこと。

雪の、というかおばあちゃんの純粋さは心が洗われますね。新刊が出るのが一年半ペースだと知って衝撃を受けるシーン(そのあと余命から逆算するのには笑いました)や、続刊の表紙の絵の違いに戸惑うシーンなど、微笑ましすぎて下手なコメディより笑えます。

「また今度」があると思ってた、とかつての夫とやり残したことに思いを馳せるシーンはぐっと来ました。
これ、個人的にもよく思っていて、僕もよく「また今度」とか「いつか」とか言ってしまうのですが、言う度にその「また今度」っていつだろうか?「いつか」って訪れるのだろうか?と、考えてしまいます。
きっとそのまま成されることなく終わっていくことが大半なのでしょうね。そう考えると少し虚しくなって、出来るだけ今出来ることはせっかくなら今やろう、と思うようにしています。

ノスタルジックな雰囲気がとても心地よく、年の差なんのそので仲良くなっていく二人が微笑ましい。おすすめです。

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