メダリスト / つるまいかだ 1巻 感想

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フィギュアスケートの全日本選手権に出場経験のある司(つかさ)。全日本を目指すには遅くとも5歳から始めるべきと言われているフィギュアスケートの世界で、14歳から始めた司は現在26歳。
20歳の時にシングルからアイスダンスに転向し、人一倍の努力とペアにも恵まれ全日本出場を果たすが経済的な理由でアイスダンスを引退、アイスショー出演へシフトするもオーディションに落ち続け今はフリーターとして過ごしている。

いつもの練習場所へ訪れると一人の女の子が。その女の子はお金を払わずリンクに入ろうとしていたため、司は引き留める。
逃げる女の子から話を聞くと、スケートをやりたいが親に頼む勇気がなく、リンクの受付のおじさんの好意で入れさせてもらっていたという。

女の子を諭し、その後約束のあった元ペアの元を訪ねると、クラブのコーチの仕事を打診される。そこで先ほど出会ったばかりの女の子、いのりと再び出会う。

実績のない自分にコーチなんて、と僻む司だが、同席したいのりの母親は娘の出来を良く思っておらず、諦めたような態度が司を熱くさせる。そして実際にいのりのスケーティングを見たとき、その才能を確信、いのりのスケートへの熱い思いも受け取り、司はいのりのコーチを志願し母親に熱弁を奮う。

無事母親の了承を得たいのりは、司とともにフィギュアスケーターとしての第一歩を踏み出す。

【感想】

フィギュアスケート題材の熱いスポーツ物。コーチである司と、選手であるいのりのダブル主人公です。

司を邪魔していたのはいつも金銭面の問題。フィギュアスケートにはお金がかかる、というのが随所で言われていて、実際お金の面で現役を辞めています。

自分ではどうすることも出来ない理不尽さ。それを知っているからこそ、母親という自分ではどうすることも出来ないいのりの不遇を自分に重ね、熱い思いでコーチを志願します。
司本人は自分のスケーターとしての形を、その場その場で変えていかざるを得ませんでした。
シングルでは実力が足りないからアイスダンス、アイスダンスではお金が足りないからアイスショー、しかしそのアイスショーはオーディションが通りません。

中々上手くいかない司の前に、希望とも言えるべき存在が。それがいのりであり、司の新たなスタートのきっかけ。後ろ向きな理由で転向を繰り返した司が、本気で向き合って決めた道です。これは応援したくなります。

司のキャラクターも、ちょっとバカっぽいですがしっかりはしていて、とにかく熱い。選手として挫折したという陰も良い塩梅。
いのりをさん付けしたり、お金で人に迷惑をかけたくないといって住み込み先から出たりと、冷静さや真面目さもあって、コーチとしては申し分ないです。何より、母親を説得するシーンの熱さがすごい。感動しました。人によっては引いてしまうのではという程の熱さです。笑

対するいのりは、出来ないヤツとしてクラスメイトから見放され、母親からも期待されず、スケートしかないのにそのスケートも満足に出来ないという悲しい女の子。
気弱ですが度胸はあり、感情の起伏が激しく落ち込んだり元気になったりを繰り返す子供の典型のようなキャラです。
不安定な性格ですが、スケートに賭ける思いは強く、ライバルキャラも1巻で出てきますが負けじと張り合う様はまさに主人公といった感じです。

また、母親が悪者っぽく思えますが、母親は母親でいのりを考えているということがわかる描写もあり、そこまで嫌味な印象はありませんでした。ちょっと気になる発言もありましたが…。

司といのり、二人ともしっかり主人公と言える程設定が出来ていてどちらにも感情移入できるようになっているのが良いです。視点がそれぞれの立場で描かれるので、良くも悪くもバランスが重要になりますが、個人的には気になりません。

全体的にテンションが高めでコメディテイストも強く、真面目なスポーツ物というよりは少し抜けた雰囲気があります。デフォルメ調の絵も多用されるので、その辺は好みが分かれそうです。

ただ、絵に関しては迫力があり、表情で訴えかけるシーンなどはグッと来ますね。少し粗さを感じますがこれも個性で、かなり上手だと思います。

話の展開的には少し無理矢理感もあったり、テンポが独特で少し読みづらい印象もありましたが、個人的には許容範囲。良いところで終わっていて引きも十分。続きも期待できそうです。

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