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トルフィンはヴィンランドへの出航に向けて着々と準備を進めていく。
民会でトルフィンはスピーチを行う。現状から逃げたい、ここではないどこかへ行きたいという人たちへ向け、共にヴィンランドへの出航に参加したい者を募った。
一人の女の子がトルフィンの元へやってきた。よくよく姿を現すと、体はやけに大きく、気弱で大人しいが、腕力は人一倍。その見た目はトルケルに瓜二つだった。
どうやら、トルケルの息子。名はハルヴァル。生まれてすぐ、このままでは大きくなったら戦場に連れて行かれてしまうと悟ったトルケルの妻は、トルケルから離すためハルヴァルを娘だと偽り、女の子として育てていくことを決め、その結果体はトルケルを受け継ぎ中身は女の子のまま大きくなってしまったようだった。
ハーフダンの奴隷であるハルヴァルは、ヴィンランドに興味を持っていた。しかし、ハーフダンはハルヴァルを譲らない。そこでトルフィンはある提案をし、ハーフダンに交渉を持ちかける。
次いでトルフィンの元へ来たのはイーヴァルという男。トルフィンは、ヴィンランドへ行くための条件として、「剣を持たない」ことを取り決めとしていた。
しかしそれに納得出来ないイーヴァルとの論争は、中々決着が付かないのであった。
トルフィンはハーフダンに相談をし、一つの結論が導かれる。剣を持たずとも争い合うことなく生活出来る保障。それはお互いの「取引」と「依存」によって成り立つと仮説を立てることができた。
トルフィンを買うハーフダンは、トルフィンに自分の養子にならないかと尋ねる。ヴィンランドへ行くことが絶対であるトルフィンは断ろうとするが、そこへシグルドが妻と子を連れ帰ってきた。初孫を抱いたハーフダンは、孫に未来を感じ、相続権を譲るのだった。
いよいよヴィンランドへ出発の時。トルフィンは大きな目標に向け一歩を踏み出す。
【感想】
いよいよ、メンバーも落ち着きヴィンランドへ向け出航です。
トルケルの息子(娘?)はびっくり。ここでこんなの挟む必要あるのでしょうか。笑
あのトルケルの息子だなんて知られたら戦場では大騒ぎになるでしょうが、当の本人がこんななので戦場に行くことはないでしょう。奥さんの育て方はきっと間違っていなかった、はず…。
ハーフダンは初めは話の分からないやつだと思っていましたが、徐々に愛着がわいてきました。この巻では真面目なところも熱いところも少しお茶目なところも存分に見られるという、ハーフダン推し(?)には堪らない内容。
ヴィンランドという土地はあくまで他人の土地ですから、トルフィン達はその辺りどう上手く交渉するのか見物ですが、戦争が当たり前のこの時代で武器を持たずにどうするの、という問いにしっかり答えを作っているのが凄い。
武力がなければそもそも話し合いにならない、というイーヴァルの意見も何ら間違ってはいなく、それはトルフィンも理解した上でノーを突きつけるという、二人の論争。正しい正しくないはわかりませんが、理想なのはトルフィンの論なのは間違いない。ただそれが机上の空論ではなく、裏付けまでしっかり言及していてさすがです。
ただ、リスクが大きいのも確かで、実際どうなるのでしょう…。
現代日本では武器の所持は禁止。いわゆる、トルフィンの理想とする世界。逆に他国では銃を持っていても取り締まられない国も多いわけで、日本はその点素晴らしいなと思いますね。
ハーフダンが話す案はまさに今の民主主義、法治国家で先見の明が凄すぎるのですが、トルフィンはそれを斜めから外す、取引と依存による関係で成り立たせるといいます。ただこれは上手くいくかどうか…スーパーの買い物とはわけが違いますから、結局は等価交換にならなければいつかはどちらかが不利になり不満が募り、争いは起きると思います。みな平等に与えられるものがあるとは限らず、貧富の差は生まれてしまいそう。
そしてシグルドが帰還しましたね。だいぶ爽やかな顔つきになって…もう別人。ハトちゃんといいコンビだなあ。ハーフダンさんはもうギャグになってる。
ついにヴィンランドへ向けて本格的に進み始めたトルフィン達。帯で新章と謳っていますが、最終章にも近いような気もします。次巻はいつだろうか…。