魔女に捧げるトリック / 渡辺静 1巻 感想 

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子供の頃から天才マジシャンと呼ばれていた針井マキト17才。傲慢な性格がキズだがマジシャンとしての手腕は超一流。マジックの師でもあり憧れでもある母親を6年前に亡くしている。

マジックを極めれば極めるほど、この世界には魔法などないことを思い知らされる。母親を取り戻したい、そんな魔法はないだろうかと異世界転生を夢に見ていた。

あるマジックショーの本番中、ハプニングでマキトは命の危機に。もう駄目だとあきらめた瞬間、マキトは別の場所へ転生していた。町並みは中世ヨーロッパ。夢にまで見た異世界に興奮するマキトは魔法の存在に期待を膨らませる。

そこで出会った女の子、ミア。彼女は自身を「魔女」と言い、子供を毒殺してしまったという。
そこへ教会の者が現れる。見つかったミアは拷問にかけられ、魔女であることを強要させられる。
その様子を見たマキト。ここは異世界などではなく現世界で、約400年前の魔女狩りが行われていた中世ヨーロッパにタイムスリップしたのだと確信した。

本当は心優しいミア。毒殺もしてなどいなかった。真実を知ったマキトはミアをマジックにより救出する作戦に出る。

無事、ミアを助け出したマキト。教会に言われるがままに魔女の存在を刷り込まれていたミア。しかし、本当は魔女など存在しなく、殺されていたのは無実の人間だったと知ったミアは、魔女狩りを止めたいと強く願った。

マジックを駆使し、マキトとミアは魔女狩りを止めるために動き出す。

【感想】

「リアルアカウント」の渡辺静さんの最新作。

リアルアカウントは未読ですが、「この彼女はフィクションです」が好きで以降気にかけている作者さん。「思春期のアイアンメイデン」もおすすめです。

そんな著者の新作、面白いです。

タイムスリップ×マジックということで、マジックの効果が最大限に発揮される舞台設定にまず期待度が上がります。
タイムスリップものは、科学がそもそもマジックのようなものとして機能しますが、そういったものは使わずあくまでマジックをいかに使いこなし状況を打破できるかという点に注視していて面白いです。

 

魔女に捧げるトリック 1巻 2話
魔女に捧げるトリック 1巻 2話

主人公のキャラは少し性格がひねくれていて、当初は魔女狩り止めに対してもあまりやる気がなかったというあまりヒーロー的なキャラではありません。しかもマジックの実力はありつつも、別にマジック自体が好きというわけではないというスタンス。
ただし、マジックへの情熱は確かにあり、教会が中途半端な仕掛けで魔女狩りを行っていく様が許せず、激昂する様子は迫力があり読んでいて感情も高まります。

 

魔女に捧げるトリック 1巻 4話
魔女に捧げるトリック 1巻 4話

歴史は詳しくはありませんが、現実に存在した出来事をテーマに新しいフィクションを組み込むタイプの作品は割と好きです。Fateシリーズや、漫画ならドリフターズ等キャラクターを引っ張ってくるのも面白いですが、今作や、例えば信長協奏曲のように史実に則りつつひっくり返るような話も面白い。魔女狩りは150年耐えれば無くなるものだと決まっているので、終わりが分かっているというのが一つの面白さ。

マジックに関しては少し無茶なものや疑問なものもありますが、概ね気にならないので個人的には大丈夫。中世ヨーロッパなのに言葉が通じてるのは何で、とかいうのはナンセンスです。

当時の情勢や文化がいろいろと描かれており、ストーリーに組み込んでいるのは舞台設定の補完として好感です。まああくまでエンタメなので深く考えたりはしませんし、マガジン掲載の少年漫画的側面が強いのでそこまで細かく突っ込んだりする読者は少ないと思います。この辺り、許容できない方はもしかすると向いてないかも…。

魔女狩りを止めるために、魔女と呼ばれてしまっている手に職のある子らを仲間にする、という展開でヒロインが増えることも既に明かされているのでキャラの華も期待できそう。みんなで教会に立ち向かう、というストーリーがどう展開されていくのか楽しみです。