【推しの子】 / 原作:赤坂アカ、作画:横槍メンゴ 1巻 感想

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地方の産婦人科の医師、ゴローはアイドル「B小町」のセンター、アイを推すアイドルオタク。
過去に担当していた患者の女の子、さりながアイの大ファンだったが12歳で亡くなり、アイにさりなを重ねている部分も大きかった。

そのアイに突然活動休止のニュースが流れる。体調不良とのことで仕事中も気になるゴローだが、そこへ男と一緒に診察へ来た女の子。年齢は16、お腹の子は20週、よくよく顔を見ると…?

彼女はアイだった。男は事務所の社長。人気絶頂のアイドルは、まさかの妊娠をしていた。

お腹の子は双子。アイは、子供を産み、アイドルも続けると決めている。公表せずに、嘘を突き続けステージに立つ。隠し通してこそ、一流のアイドルだと。そして、アイドルとしても、母としても幸せをつかみ取りたい。そう思っている。

予定日を迎え、いよいよ出産間近。そんなとき、ゴローに怪しい人影が忍び寄る。アイを追ってきたその男に、ゴローは殺されてしまう。

薄れゆく意識の中でアイの子のことを思うゴロー。気がつくと、アイの腕の中。ゴローは、アイの双子の子として、転生していた。

【感想】

特殊な輪廻転生もの。第1話の完成度が高く、タイトルの妙もありなるほどと思わせる、これは期待度の高い作品。

双子の子に転生。記憶や知識は前世を引き継ぎ、体だけが赤ん坊に戻ったということでコメディチックなシュールさもありちょっと面白いです。もう片方の子は患者だった女の子のさりな。ただ、現段階ではお互いを認識していません。いずれ判明していくのでしょう。

アイドル=嘘つきというフレーズが良く出てきますが、言い方があれですがその通りだと思っています。
ファンを楽しませることがアイドルの仕事であり、表の顔さえ間違えなければなんだっていい。ファンにとっては、目の前のアイだけが真実。
ただし、この約束がひっくり返るときに、事件が起きてしまいます。現実のニュースでも痛ましい事件がありましたが、好きが暴走したときのエネルギーはあまりに巨大で、あまりに危険。

今作の場合、単純なファンの逆恨みというわけではないようですが…ゴローは見事に巻き込まれてしまいます。

コメディとシリアスを行ったり来たりしながら、アイと二人の双子をメインに進み、後半は大きく話が動きます。毎話の冒頭にヒントはありましたが、本筋はここから。

アイの不安定なキャラクターも良かったですね。アイなりの愛の伝え方。わからないなりにも考えた結果がこれで、それをあれこれ言われる筋合いはないですよね。
それでも心ない言葉を言われてしまうのが人前に立つ人たちの性。

証明できないことをよく推測で声高々に言えるものだなと、現実でも思ったりすることがありますが、その「推測」もその人にとっては何故か真実になってしまっているという怖さがあります。根拠がなくてもそれが真実になっている、というねじ曲がりに違和感を覚えることが最近多いな、とアイの周りを見て思い出しました。

話が逸れました。
1話での掴み、中盤のコメディと不穏な空気のバランス、そしてラスト2話の展開から物語の大枠が動き出す期待感、構成がとても良くて1巻としての完成度は非常に高く感じました。シンプルに面白かったです。