ミステリと言う勿れ / 田村由美 1巻 感想

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天然パーマの大学生、久能整(くのうととのう)は一人暮らしでカレーを調理中。インターホンが鳴り開けてみると警察だった。

近くで殺人事件があり、話を聞きたいと署まで連れて行かれる。警察の話を聞くうちに、自分が容疑にかけられていることに気付く。

整は否定をするが圧をかけてくる刑事たち。見に覚えのない整は、否定するしかない。時間も経ち、刑事たちの何気ない会話を聞くうちに、刑事たち一人一人にその「何気ない会話」の内容について自分が思うことをつらつらと話し始める。それは事件とはまるで関係はないが、刑事一人一人に刺さる言葉の数々だった。

そうしているうちにも物的証拠が少しずつ上がっていくが、全く焦る様子はなく喋り続ける整。すると、徐々にいくつかの矛盾や気になることが浮き上がってきた。

本当の犯人は誰なのか、この事件の真相とは。

【感想】

「BASARA」「7SEEDS」の田村由美さん最新作。といってももう7巻まで出てますね。

天パの主人公、整がひたすら喋り続ける漫画。それだけですが、その論調があまりに美しすぎて圧倒されました。

冤罪で署まで連れて行かれてからは、周りの刑事の観察に始まり、自分が思うことをただ喋り続けます。その内容が余りに正論で、的を射ていて、刑事たちが逆に感心してしまう展開。

その後もまあとにかく喋る。ただ、お喋りな人というよりは、機械から勝手に言葉が飛び出してくるようなイメージ。本人は常にぼーっとしていて何にも感心がないような雰囲気で、でも頭の中には様々な思いが巡っているようです。

 

ミステリと言う勿れ 1巻
ミステリと言う勿れ 1巻

一つの真実を追いかけると言う刑事に、「真実は一つじゃない」と、某少年探偵もびっくりのセリフ。いやしかし、まさにその通り。

 

ミステリと言う勿れ 1巻
ミステリと言う勿れ 1巻

ただ話しているだけでどんどん事件の真相に近付いていきます。一つのゴールにたどり着き、それはある程度予想の付いたところですがそこからまた一捻り。すごい。何でも売れる作者の、頭の中は本当どうなっているのでしょう。

弁論をまくし立てるタイプのキャラではなく、ただ淡々と思っていることをつぶやいているというような語り口が妙に心地よくて、それが正論なもんだからぐうの音も出ず頷くことしかできない。「論破」という表現は俗っぽくてあまり好きではないのですが、まさにそんな感じ。

読んでいてタメになると言いますか、当事者でなくてもなるほどと思いたくなるような整の喋り。この内容を知れるだけで単行本を買うメリットがあるのでは、と思うくらい。しかも物語はしっかり構築されていて、あくまで話を転がすための喋りに留めているのが、たまにある説教漫画とは違って本当にすごい。

 

ミステリと言う勿れ 1巻
ミステリと言う勿れ 1巻

2話でもその語りは止まらず、しかし物語は確実に始まりそうな予感を見せます。

括りとしては推理ものですが、探偵でもなければ刑事に手を貸すわけでもなく。事件に巻き込まれてしまうのは当然なのですが、一つ一つ区切りが付いていくのは非常に読みやすく面白い。2020年、これを放置してたのは失敗だったな…。

他人のレビューを見てみると、整の喋りを「説教」だと捉えてしまう人が多いようで、ああ、それこそ整にまたぼやかれてしまう案件だなあと感じざるを得ず…。たまに本当の説教漫画もありますが、今作をそれらと一緒にしてしまうのはもったいない。おすすめです。

 

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