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子供の頃からジャンプでの連載に憧れ漫画を描き続けている主人公の佐々木哲平。
二十歳の時に新人賞を取ってから丸四年、編集にネームを提出し続けるも、未だに読み切り掲載までもいけないでいた。
自信のあったネームも全ボツを食らい漫画家を諦めようかと思ったその時、家の電子レンジに雷が落ちる。
丸焦げになったその電子レンジの中には、10年後の週刊少年ジャンプが入っていた。
そのジャンプで新連載として始まったアイノイツキの「ホワイトナイト」に衝撃を受けた主人公。ジャンプはすぐ消えてしまったため自分の中から現れたアイデアだと思った主人公は、記憶を頼りに「ホワイトナイト」のネームを描く。
会議に通ったホワイトナイトは即読切が掲載された。圧倒的な人気を集め、素晴らしい結果を見せたが、その読み切りを読む一人の女子高生が。
それは10年後にホワイトナイトを連載するはずだった、現代のアイノイツキの姿だった。
【感想】
漫画家モノ×SF作品。
1巻の酷評を外部のレビューで見てしまい、少し引っ張られた感想になりそうです。
1話前半、完全に心が折られた状態で、そこに幻のような非現実的な出来事が起こりネームを描いてしまう。
これに対して「やってしまった」と気付くのは続きのジャンプが送られてきていることに気付いてから。
盗作には間違いないですが、あの瞬間は心身ともに滅茶苦茶な状況で、興奮冷めやらぬまま描いてしまうというのは致し方ない気もします。
成功するのが一握りの世界で、これまで散々努力してきた、それでも結果が出せなかったのは、才能がなかったから。
そんなときに起きた奇跡的なアイデア、夢だと思って興奮して描いてしまう、むしろそうするのが普通でしょう。
しかし、その後描き続けるかどうか、そしてアイノイツキの存在がどう主人公に影響を及ぼすか、というのがポイントになりそうです。
ただアイノイツキはあっという間に主人公の前に現れ、その後は主人公のアシスタントとして更に近い位置で接します。そしてホワイトナイトは連載。
主人公が「ホワイトナイトを続ける」ということがこの作品のそもそものプロットとしてあるようで、罪の意識を持ちながらも盗作をし続けるという中々の展開で進みます。
未来のジャンプと言えど、他人のふんどしで相撲を取っているようなものですが、ここまで来たら確かに引き下がれないのかもなあとも思います。
周りの持ち上げ方が異常なので、主人公も開き直ったような感じですが、正直ここですっぱり止められる方がすごいとは思います。
描き続けることが免罪符にはならないことを自覚している主人公ですから、後ろめたさを感じていることは読者にも伝わります。
とにかく、「ホワイトナイト」という作品に罪はない。アイノイツキが描くことはもう出来ないので、世に出てしまったこの作品を完結させることに義務感を感じる主人公の気持ちは理解できますし、そうするべきだと思います。
主人公が「空っぽ」で才能のない人間だということが1話、2話ではそれなりに描かれているので、ただのパクリ野郎にならないように、アイデアに「努力」がないならその分、未熟な自分でもそれなりの形になるくらい、仕上がりに対して「努力」を注げばそれでいいのではないでしょうか。
3話以降はそれが空回りしている感は否めませんが…。
しかし、青年誌ならむしろその「パクリ」という部分を逆手に取って話を進められそうですが…ジャンプという舞台がこの原作者さんの首を絞めているような気もします。
ちなみに絵に関してはかなり描き込まれていて表情も豊かで、説得力はかなりあります。ストーリーを補えるレベルの画力だと思います。
この後は、ジャンプが送られてくる理由や、後半に判明する重大事実など、タイムパラドクスに対して抗う主人公というSF側の話も展開されるはずで、おそらくメインはこっちでしょう。
主人公、アイノイツキともに納得いく結末を迎えて欲しいです。
1巻の感想なのにあまり紹介っぽくなりませんでしたが…SF設定の情報の出し方や主人公のキャラ等、もっとツメれば佳作になりうる作品だと思います。ジャンプは競争が激しいですが、何とか描ききってもらいたいですね。