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魔法が重罪とされている中、神罰騎士団の前で魔法を使ってしまったソルテでしたが、ブラックの機転で何とかその場を凌ぎます。
霊宝と呼ばれる、それこそ魔法のような便利グッズ。使いこなせば戦闘にも大きく貢献し、生活にも役立つという代物ですが、それでとりあえずは切り抜けたソルテ達。
その後は必要な霊宝を調達し、魔界へと行く準備を整える一行。この霊宝のバリエーションも中々面白いです。水筒に入れておけば常に水が満タンになる霊宝、入れておけば食料が腐らない箱、仲間とはぐれても再会できるコイン…なんだか学生が夢見るおもしろ設定を詰め込んだようなラインナップ。こういう若々しさというかやりたいことをやってる感じが水上節と言いますか、良いですよね。
途中神罰騎士団に追われますが、勢いで魔界へ突入。その魔界もまたいろんなパターンがあり…幻の崖から始まり、ただただうるさい道、後ろ向きに歩くと進める草原、長すぎる階段、その他諸々…
しかも二週目のセレンが、一周目で訪れた魔界の不思議空間をどんどんネタバレしていくという、なんだか冒険の根底を覆すような表現で…こんな描き方は普通しませんて。そしてまず訪れた魔界は初めましての空間。セレンが訪れたことのある魔界は出てくるのかな…相変わらず独特な展開。
途中、フィロの過去が明かされます。闘神の呪いというものにかかっていたフィロですが、その詳細について。
一国の王子だったフィロは、国を守っていた闘神という神の加護を継続させるための儀式で、運悪く闘神の呪いを発動させてしまい、国を滅ぼしてしまったのだと言います。そしてその時の出来事が今もトラウマになっています。
フィロの境遇はただただ不運というか、同情しかないというか…数ページでさらっと描かれていますが、かなり重くて暗いエピソード。ここまでエグい境遇を持たせるのであれば、当時の国の人間が生きていたりとか、闘神と対峙する描写だとかをしっかり設けて、ちゃんと物語に組み込んで救ってほしい。キャラの肉付けのためだけの設定にはしてほしくないなあ…と思ったりしてます。
神罰騎士団のルード隊は魔界調査団のドロシー一行を護衛していますが、ドロシー達は実はサルベイジャーのギルド長と繋がっていました。
内容は不明ですが、ドロシー達とギルド長は師弟関係にあり、理想を同じくして活動をしているよう。国には隠しているようですが、あっさりルード隊にはバレてしまいます。ルード隊としては特に気にするほどのことではないようですが…。
そしてルード隊もギルド長も気にしているのは、ブラックの存在。エヴェレット・ブラックという人物を捜していて、モグラのブラックが当人ではないかと疑っています。ただ、精霊病は若いときにしかかからないと言われており、確信が持てていない。ただルード隊はモグラのブラックとソルテを確保するよう司教から令が下ります。
それもグレン図文書という謎の文書の閲覧が出来たのがエヴェレット・ブラックだといいます。司教側の思惑は、国との魔界探索における対立。前半でブラックから「精神支配霊宝」という単語が出てきますが、これを狙っているよう。とにかく、ブラックは重要人物だということ。
螺旋の魔界を思いきりで抜け、巨大魚の腹の中を通り、出てきたところで目にした空に浮かぶ山。その山をブラックは「飛び山」と呼びました。
何を隠そう、モグラのブラックこそ、エヴェレット・ブラック。飛び山はグレン図文書に出てきたから知っていたとのこと。
そして話はブラックの過去へ。教師をしていたブラックでしたが、様々な研究の成果物が様々な人の助けになり、その成果が知れ渡り国にお呼ばれされることに。そこで承った称号が「エヴェレット」。
知見を持っていたブラックはそれから国で働くことになり、あるタイミングでグレン図文書を見ることに。そこで、それが読めることに気付きます。
それは「マンガ」でした。
マンガが世にない世界、ただブラックには前世の記憶があり、グレンの魂も同郷。輪廻転生を繰り返し、前世の記憶を持っていたから知見が広かったというびっくり事実。
そして更に、過去のブラックが読んでいた前エヴェレットが書いた天文の書物により、この世界は太陽系・地球の軌道上に「円筒形」で位置しているという記録。
ここで本編は終わり、ブラックの謎、この世界の謎が更に深まり、次の話は読み切りとなっていますが、この読み切りがまさかの本編に連結しているという更なる驚きの構成。
グレン図文書そのものであるマンガを、読み切りとして載せるという、こんなやり方水上さんしかしないですよ…。
しかもそこで明らかになる異世界転生という事実。実はこの作品、流行りの転生ものでした。もう何がなにやら…笑
ソルテの冒険ファンタジーかと思いきや、タイムリープものかと思いきや、異世界転生…新しい設定やら情報がどんどん出てきて、正直頭を整理しないと展開を飲み込めないほどの水上流ファンタジー。転生したのが主人公じゃないってどゆこと…。
あと読み切りラストのメタ的な描写も更に混乱させます。グレンと水上さんは知り合いなんですか…。
昨今流行りの「なろう系」とも言うような要素をふんだんに織り交ぜてぐちゃぐちゃにかき混ぜながらゆっくり料理していく水上さん独特の世界観。
物語はまだまだこれからですが、何か他にも隠し玉があるのではと思わせるような、驚きの連続だった2巻。
正直読み手は選ぶというか、スタンダードな面白さでは決してないです、水上さんの作品は。
でも漫画好きとしてはどうしても外せない、唯一無二な著者であることは間違いないので、気になる方は一読をおすすめします。