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ライラとレイリ、サームとサーミ。双子同士の結婚式。この地域の式では宴会が一週間以上続き、盛大な料理や踊りをもって親戚や知り合い以外の町行く人も通りがかりにお祝いをする。
その間、花嫁はじっとしていなければならないが、そんなことはこの双子にとっては苦痛でしかなく、いつものような破天荒さでこっそり抜け出しては花婿の助けも借りながら自分たちの式を楽しんでいた。
賑わっている中で、アリとスミスはこの町を発つことを決める。目的地はアンカラ。まだ道のりは続くが、少しずつ歩を進める。
【感想】
双子のお話の続き。式、宴会の様子を巻の半分を使って存分に描き上げています。
ライラもレイリも落ち着きがなくわがままなので、サームとサーミは大変ですね…。面倒見の良い花婿二人はサポートをしますが、時代なのか地域の文化なのかはたまた二人の性格か、それも良しとしているところが優しさを感じます。
一回だけ、サーミが俺達だけ言うこと聞いて不公平じゃないか?とサームに唱えますが、これが普通の感覚でしょうね。それでも、そういうことではないだろと諭すサーム。結婚って難しいですねえ。
その後、家族と離ればなれになることに急に実感がわいて泣き出すライラとレイリ。と思ったら疲れて寝てしまう。感受性が豊かで素直な性格が良いのやら悪いのやら。周りは大変でしょうけど、個人的に見ている分には楽しいです。かわいらしいです。
これから奥さんとして成長して、子供が出来たりしたら教える側になって、少しずつ大人になっていくのでしょうね。そうなったときの二人もまた、見てみたいなあと思います。
スミスが発ち、後書きにもありましたがこのあとはアミルたちの話にシフトするそうですね。
巻の後半はアミルとカルルクのエピソード。鷹に妬くカルルク。年齢よりはかなり大人なカルルクですが、やはりまだまだ幼い面も。いやいや、それが良いんですけどね。
1点だけ。鷹の怪我がどうしても治らない場合、飼ってみるかと提案するカルルクに対してそれはダメだと一蹴するアミルのシーン。
鳥は空を飛んで生きるもの、人の手から餌をもらって生きるのは、生きているとは言わない、そうするくらいなら野に放して食べられてしまった方がましだ、とアミルは言います。
カルルクもそれに納得をする。これは、この地域の文化なのか、アミルの育てられ方なのか、時代なのか。よく考えると、動物は家畜として飼うことはあってもペットとして飼うということはないように思えます。
そういう発想がないのか、感覚として持ち合わせていないのか。その辺りは森さんに直接聞いてみたいくらいですが、とにかく餌だけやって飼うくらいなら殺した方がいいとまで言うのは正直違和感で、現代とは違うんだなあとすごく強く思ったシーンです。
まあ、現代でも鷹を飼うのは中々難しいかもですが、たぶん犬猫でも同じような結論になるような気はします。
一応念のためですが、アミルが非情だとかそういうことを言いたいのではないのであしからず。むしろアミルほど優しく逞しく出来た女性は珍しい。これで20歳というのだからまあ…すごいですね。
双子の結婚式もそうですが、現代日本と全く異なる舞台でのお話は、こうした不自然さを感じられるということがある意味一つのメリットであって、この作品の良さです。
そうした風習や文化の裏付けを、森さんは資料等でしっかりなされているようなので素晴らしいですね。本当、時代考証って本当に大変だと思います。この作品に限ったことではありませんが。どこかで齟齬が出たとしても、僕が何かを言える義理ではない。笑
スミスの旅もまだまだ。続きも楽しみです。