↑試し読み、購入できます。(画像クリック)
カルルクはアゼル達に頼み狩りを教わっていた。いざというときにみんなを守れるように。また、アミルに男らしいところを見せるために。
弓の練習、鷹狩りの練習。アミルをあえて遠ざけ、男らしくなった自分を見せると意気込むカルルク。寝食ともにアゼル達にお世話になり、狩りが少しずつ形になっていく。
一ヶ月ぶりのアミルとの再会。男らしさに自信のないカルルクは、自分との結婚を良く思っていないのではないか、とアミルにこぼすが、アミルはそれを否定。男らしさも強さも関係ない、カルルクが好きだと真っ直ぐな瞳で応えた。
場面は変わり、スミスとアリのアンカラへの道のり。野盗に会い散々な二人は隊商に同行し街を目指すことに。アンカラではスミスを待つ友人のホーキンズが彼らを心配していた。
無事アンカラへ着いた二人。ホーキンズに顔合わせをし、スミスは国の情勢、現況を知る。戦争が近付きつつある今、スミスに帰国を勧めるホーキンズだが、調査を続けたいスミスの意志に負け、カメラを渡しスミスを見送ることにする。
街を歩いていたスミスの元に、一人の女性が。なんと、その女性はタラスだった。
スミスを追い、ここまで来たのだという。
スミスの側にいられるなら、戻らなくてもいいというタラス。驚きを隠せないスミスだが、改めて気持ちを整理したスミスは、タラスの手を優しく握った。
【感想】
前半はカルルクとアミルの話。年上と結婚することになり、自分の幼さ、弱さにコンプレックスを抱いていたカルルクが一皮剥けようと頑張ります。
アゼル達も親身に教えてあげるこの師弟関係のような雰囲気いいですね。アゼルは完全に気を遣ってますが、圧倒的な実力で頼れる師匠のようなイメージ。ジョルクは気さくでいい先輩。バイマトは寡黙ですが信頼できる上司ですね。
カルルクは強くなろうなろうと気負いすぎていますが、成長期まっただ中なので体的にはちょうどこれから。精神的には十分立派なので、自然と格好いい大人になりそう。
カルルクがアミルに不安をこぼす会話のシーン。シンプルなやりとりですが、お互いの気持ちの理解という上で非常に重要なシーン。現実でも、確かに重要なことですね。最後、抱き合う二人の見開きは良かった…。
後半はついにスミスがアンカラに到着。10巻にしてやっと。そして、例の友人と会います。
道中、隊商の中に混じって進みますが、アリの立ち振る舞いの上手さは芸術的。乙嫁語り内でもアゼルに並んで頭がキレるキャラではないでしょうか。
何より、自分の考えというモノが一貫しています。何が正しくて何が間違っているのか、主張がはっきりしているので妙に説得力があります。
特に、文化の違いに関しては顕著です。3巻でタラスが行き違いで結婚してしまったときも、それはしょうがないと一蹴。今巻では山で出会った意趣返しの文化に対して、報復相手を探す男に相手の情報を伝え、早く終わった方がいいだろとスミスに言ってのけます。
どこかドライで、合理的。かつ誇りや文化を重んじていて芯が通ってます。現実にいたら非常に関わりにくいタイプなんですが…ある意味信頼は出来ます。スミスもアリへの信頼は厚いようですし。
道中で暇を持て余した際にアリがやっていた動物の毛をアートのように刈るシーン。動物がイヤじゃなければいいのでしょうが、これって一歩間違えると動物何とか団体とかから言われてしまうやつでは…??と思い少し気になったのですが、調べてみるとそういう文化があるところはあるみたいですね。まあ…森さんがその辺り不用意なわけはないのですが。
現実でもインドでは大会が開かれているようで。ラクダアートと言うらしいですが、作中でもラクダでした。ネットで検索すると画像が出てきますが、凄いですね。ちなみに森さんの絵も凄いです。
アンカラで落ち合ったスミスとホーキンズですが、ホーキンズの心配を受け止めつつもスミスの確固たる意志が炸裂。この旅はスミスの趣味だと思っていますが、改めてスミスって何者なんでしょう。あまり言及されないですよね。狂言回しの立場なのであまり掘り下げる必要もないと思いますが…。
また、この巻ラストでタラスが出てきます。いずれ出るだろうとは思いつつ、こんなところで。スミスは時計を捨ててまで一旦区切りを付けてしまったのですが、タラスはここまで追ってくるという、女性の強さたるや…。スミスも願ったりでしょうし、応えないわけがないでしょう。
語り部本人が乙嫁の相手になるという、ならばスミス本人ももう少し掘り下げて欲しい気もしなくもないです。次巻はこの二人ですかね。タラスは3巻で無念だったこともあり、待望のエピソード。楽しみですね。