猫が西向きゃ / 漆原友紀 1巻 感想

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広田フロー(株)で働く広田と、役所からの紹介でアルバイトとして入社した智万(ちま)。

フローとは浮動化とも言い、この世界にゆらゆらと安定せず存在する概念的な現象。時に人の心などに影響され、物の形に大きな変化を及ぼす。

自然発生の場合もあれば、人が起因の場合もあり、そんなフロー現象を解決、もしくは解消時期を予測するのが「フロー業者」である広田の仕事だった。

三叉路が七叉路に増えた交差点、真夏に咲く桜、カドというカドが取れ丸くなった商店街など、次々起こる不思議な現象を日々解決していく。

【感想】

「蟲師」の著者、漆原さんの作品。
蟲師の現代版と言ったイメージで、著者お得意の人の心にまつわるエピソード。
蟲師は時代背景や描写と「蟲」というオリジナル事象が合っていて、ノスタルジックな雰囲気がとても好きな作品ですが、今回は少し軽い感じで進むライトな蟲師といった感じです。

猫が社長って…ARIAじゃないですかとツッコみたくなりますが、この猫が仕事には重要で、問題が起きたフローのダウジング的な役割を持ちます。
犬が西向きゃ…とは言いますが、猫が西向きゃ、当たり前とは180度違う不思議現象が待っているということなのですね。

基本一話完結の短編です。ふわっとした終わり方もあれば結論が出る物もあり、この辺りは著者作のあるある。空気感を楽しむのがベスト。
謎現象も普通に考えれば大事件というか大問題というか、もっとパニックになってもおかしくないレベルですが、住民も結構落ち着いていてなんだか世界レベルで引っかけられているような感覚。そういう世界観。

そもそもヒロイン?である智万が盛大なフローの被害を受けていて、なのにあまり問題視されずにそのまま流れるように進みます。書く著者によってはパニックサバイバルものにも変わりそうな設定ですが、あとがきで著者本人が「現代もの風景まんが」と言う辺り、書きたいように書いているのだなと妙に納得…。

「フロー」というオリジナルの現象は何でもありで、だからこそエピソードも無限大。
どの話も特に目立つものがあるわけではなく、言ってしまえば淡々と進むものですが、非現実的で突飛な現象そのものが新鮮で、どこか懐かしい。アイデア勝負になってはしまいますが、1巻はそれでも十分楽しめました。

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