児童相談所に勤務する夏目アラタは、ある担当児童の男の子から、自分の父親を殺した殺人鬼に会ってきて欲しいと頼まれる。
男の子は拘置所にいる殺人鬼、品川真珠(しんじゅ)と、「夏目アラタ」の名前で文通をしていた。
3件のバラバラ殺人事件の犯人として捕らわれている真珠。殺された男の子の父親の首はまだ見つかっておらず、男の子は父親の首の行方を追うために真珠と手紙のやりとりを繰り返していた。
男の子は既に一線を越えようとしていた。「悪」から男の子を遠ざけるため、アラタはひとり拘置所へ、真珠に会いに向かうのだった。
【感想】
殺人鬼と児相の主人公との駆け引きが魅力の心理サスペンス。幽麗塔も面白かったですが、それも越えそうな導入。1巻はかなり面白いです。
男の子の父親の首の在処を探るために真珠に近づくアラタ。拘置所ではアクリル版を挟んでのやり取りしかできませんが、このやり取りが面白い。何を考えているか分からない真珠の不気味さ、おちゃらけながら真意を探ろうとするアラタ。しかし真珠の方がどうやら一枚上手なようで、まだまだ驚かされそうな事実が隠されていそう。
面と向かったコミュニケーションを取るために、結婚を申し出るアラタ。死刑は免れないと確信しているため、内心は「出来るわけないだろ」とタカをくくるアラタですが、真珠と会話をするうちに徐々にそれが現実味を帯びていくような、もしかすると真珠は本当に出てくるのではないかという恐怖、緊迫感が伝わってきて目が離せない。
ホラーチックな雰囲気と緻密な絵がその不気味さをかなり上手く表現しています。
真珠のビジュアルも良い。綺麗な顔立ちとスレンダーな体型、そして特徴でもあるガタガタな歯がアンバランスさを醸し出していて、美しさの中に不気味さが見え隠れする、魅力的なキャラ。
主人公のアラタも、芯のある男らしいキャラで好感。頭もそれなりに良いので話の展開もストレスがなくて良いです。飄々としていますが、やる時はやる、といった頼もしさが魅力。
情報を得るためだけの「結婚」という選択肢が、これからアラタを苦しめていきそうな不安を感じさせますねえ…。
真珠は本当に何を考えているのか分からず、表向きは結婚にかなり前向きですがその本意も正直分からず。
真珠の内面や目的の掘り下げは今後注目すべき点で、アラタがどこまで真珠に近づけるのか、楽しみですね。