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ラジオやテレビの大喜利コーナーに投稿を重ねる高校生の四十万畦道(しじまあぜみち)。
採用の連続で、界隈では有名な投稿者だったが、家族には隠していた。
お笑いに興味を持ったのは、中学の頃離ればなれになった女の子、みずはの影響。家庭の事情で引っ越しが決まったみずはに投げかけられた「最後に面白い話をして」というお願いに答えられなかったことが今でも尾を引いている。
生徒会役員の畦道は、文化祭のイベント準備中。お笑いステージにエントリーしていた別クラスの東片太陽に、あまりにも杜撰なエントリーシートの詳細を聞くために声を掛けた。
本気でお笑いを追いかける太陽と話をしていくうちに、畦道があの有名な投稿者だということがバレてしまい、太陽にコンビを組むことを迫られる。
しかしあがり症の畦道は人前でお笑いをやることは無謀だと感じており、太陽の誘いを断る。
それでも諦められない太陽の作戦により、文化祭のステージへ二人で立つことになってしまった。
覚悟を決めた畦道と太陽の二人のコントは、会場を沸かせた。初めての人前でのネタ披露。その感覚に溺れた畦道。もしかしたら太陽と二人なら上を目指せるかもしれない、そしてみずはに今の自分を見せられるかもしれない。そう感じた畦道は、お笑いの頂点を目指すことを決意した。
【感想】
お笑い芸人を目指す高校生の物語。原作は小説家の浅倉秋成、作画はあの小畑健ですね。
1巻は間違いなく面白いです。絵も素晴らしく良い。
過去の後悔を引きずっている畦道。太陽も、かつてコンビを組んでいた死んだ友人の目標を受け継ぎお笑いのトップを目指すという、二人とも成し遂げたい思いを明確に持ちながら進んでいきます。
ネタは作れるけど人前が苦手な畦道と、ネタは壊滅的だが喋りが得意で人前でも物怖じしない太陽。
この持ちつ持たれつのバディ関係が、鉄板ですが最高に上手く機能しています。
畦道は大喜利コーナーの投稿者として実力十分、太陽は子役として活動してた時期があり、知名度と度胸は抜群。
初のネタ見せとなった文化祭ではしっかりネタを披露しますが、そのネタもちゃんと作り込まれていて、しかもちゃんと面白い。
お笑いを扱う漫画はどこまでしっかりネタを描ききるかというところが肝。
作中で盛り上がってるだけのネタでは読者が冷めるだけというかなりシビアなジャンルですが、そこを正面から描きながらクオリティも良いという、これはすごいことなのでは。
その後も、ただネタを作り込むだけではなくその場に応じた「笑い」を論理的に攻略していく様は、本当によく出来てるなあと。
最後の引きも二人の可能性を感じさせながらまたぐので次の巻への期待が大きい。
1巻の完成度はかなり高いです。
また、少し印象に残ったシーンがあるのですが、2話の家族を説得する話。若干のネタバレになりますが…。
努力が才能を補えなかった父親の思いがズシンと来ます。
「才能」があるかないか。努力が才能を引き出すものだとしても、成功への鍵であることは確か。二人にはその「才能」がある。
無責任に背中は押せない、残酷なようで、これは一つの思いやり。この父親のバックボーンがあって、父親には「背中を押す才能」があったという落としどころはちょっと感動的でした。
原作と作画、実力派のタッグですが、その実力を遺憾なく発揮してくれている、名作になりそうな予感をさせられる始まりです。