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南太平洋パラオ諸島南部の小さな島、ペリリュー島。アメリカとの戦争に駆り出された田丸は、綺麗な自然のあるこの島で洞窟掘りをしていた。
趣味は漫画を描くこと。外でも隠れながら漫画を描いていた。
そんな中、アメリカからの空襲を受け仲間に多数の死者を出す。続く攻撃により焼けていく島を見て、死が身近にあることを思い知らされていた。
同じ仲間の小山は、過去の戦争で活躍した父親のように自分もこの戦争で価値のある生き方をしたいと話していた。
それを聞いた田丸は自分にもそんな考え方が出来るだろうかと思いに耽っていたが、翌日、小山は足を滑らせあっさりと死んでしまう。
無駄死にとも言える死を目の当たりにした小山だったが、突然上官に呼び出された。
そこで頼まれたのが、「功績係」という仕事。
死んでしまった小山の遺族に宛てる手紙には転んで死んだとは書けない。小山の死を体の良いように捏造して送るため、漫画が描け創造力に長けている田丸に白羽の矢が立った。
【感想】
太平洋戦争真っ直中の、ペリリュー島での戦争の背景を描いた作品。史実はありつつも、田丸という主人公を置き、あくまでフィクションとして戦争の怖さ、辛さを描いています。
絵が柔らかく、凄惨な現場もなんだかおどけて見えてしまうようなタッチではあるものの、読んでいくにつれこの絵にリアルさを感じてしまうのはテンポや間が上手なのかなと感じます。
主人公の田丸は性格的には気弱な方で、戦うことにも前向きではないのですが、周りで気概のある同志がどんどん死んでいく様子を見ながらも精神的には安定しているという強さがあります。
「功績係」というのが今作の肝で、なるほどこういう仕事もあるのか、と頷きました。
確かに戦争は行ったっきり。家族の元に無事に戻れるかどうかもわからず、最後は隊からの手紙のみということもあるようで、嘘も方便とはまさにこのことか…と。
1巻では初めの小山の話でしかしっかり描かれなかったので、これからの話ではもう少し掘り下げて欲しいです。
暗くなりがちな題材で淡々と物語を描きつつ、下手にグロ描写や痛々しい描写を設けないことが逆にいい味を出している良作でした。