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悲鳴嶼vs上弦の壱、黒死牟。悲鳴嶼と不死川にも痣が発現していた。黒死牟曰く、痣が発現したものは例外なく25歳よりも若いうちに死んでしまうというが、元より鬼殺隊として死ぬ覚悟を持って任務にあたる二人は、目の前の上弦の壱を倒すことのみに集中し連携する。
体を裂かれていた玄弥は、鬼喰いの力で体をつなぎ止める。そして、切り離された上弦の壱の髪を喰うことで更に鬼の力を引き出そうとしていた。
2vs1で押す悲鳴嶼と実弥だが、黒死牟は持つ刀の形を変えこれまでとは比べものにならない技と力で二人を襲う。月の呼吸の型は尽きず、様々な技を繰り出し二人を圧倒する。
二人のサポートに廻ろうとする時透。既に出血は致死量を上回ることが想定され、死も時間の問題だと悟る時透は少しでも役に立つようにと、黒死牟の間合いに入る。そして、黒死牟の腹に刀を突き刺した。悲鳴嶼の鉄球が黒死牟の体を抉る。玄弥の銃が、黒死牟を狙い撃ち、血鬼術が発動。黒死牟の体は木の根により捕らえられる。実弥も加わり、四人の猛攻がついに黒死牟に死を予感させる。
その瞬間、黒死牟は体から幾つもの刀を出現させる。時透と玄弥の体は裂かれ、悲鳴嶼と実弥は吹き飛ばされる。時透は瀕死の状態。しかし執念で刀は離さない。黒死牟に刺さったままのその刀は赤く染まった。同じく瀕死の玄弥も最期の血鬼術を発動。その血鬼術より技が出せない黒死牟。悲鳴嶼と実弥の猛追が始まる。そして、悲鳴嶼の鉄球と実弥の刀は、硬い黒死牟の首をついに叩き落とした。
しかし体だけでまだ生きている黒死牟。追い討ちを掛けるが、猛追虚しく頭が再生してしまう。しかしその再生した姿は、あまりに醜く酷い姿。自らの姿を見た黒死牟は、自らに問いかける。この姿が本当に自分の望みだったのかと。
黒死牟の過去。黒死牟には双子の弟がいた。名を縁壱。痣を発現させながら、25を越えても生きていた男だった。その剣の実力は他の誰をも凌ぎ、鬼狩りの歴史の中で、最も優れた剣士だった。
双子として生まれた黒死牟と縁壱。黒死牟の人間の頃の名は巌勝。双子の弟である縁壱は跡目争いの的となり、巌勝とは差を付けられ育てられた。
赤子の頃から、物も喋らず表情もない縁壱。ある日、巌勝の稽古に顔を出し、巌勝が一度も勝てなかった父の輩下を一瞬で下す。縁壱は剣技の天才だった。
才能もあり、努力もし続けた巌勝を一瞬で抜き去る天才、縁壱。実力で負ける巌勝は自分の今後の立場に不安になるが、そこへ母の訃報が舞い込む。巌勝の前に現れた縁壱は、跡継ぎになることを避けるため家を発つことを報告する。全てに於いて先を行かれた巌勝は縁壱に激しく嫉妬する。
時が経ったある日、巌勝が鬼に襲われている際に縁壱と再会をする。十年余りで縁壱は更に強くなっており、巌勝を助けた。人格者となっていた縁壱を見た巌勝は、更に嫉妬の炎を燃やす。
巌勝は鍛練を重ねついに痣が発現するが、痣が出た者は若くして死んでしまうことを知る。そんな時に出会ったのが無惨だった。強くなりたい、永く生きたい、その願いを叶えるため、巌勝は鬼になる道を選んだ。
それでも、鬼になってまでも、縁壱には勝てなかった。剣の強さも、人としての心も。憧れ、嫉妬し、何故自分は縁壱とこんなにも違うのかと、自分自身に問いかけながら、黒死牟は消えていった。
【感想】
この巻は上弦の壱、黒死牟との戦いがメイン。回想半分、戦闘半分という、鬼側である黒死牟の思いを強く描いた巻でした。
戦闘に関しては、黒死牟の強さは鬼殺隊一人では全く歯が立たないレベルで、柱三人と玄弥で挑むという4vs1の構図。これでギリとは…二人死んでしまうし…。
とにかく、主要キャラが死んでいく鬼滅の刃。敵である鬼にもスポットを強く当てるためか、こちらの犠牲も中々多い。正直、だんだん誰が死んでも驚かなくなってきました。笑
黒死牟の見える世界を時透や悲鳴嶼が会得したり全員の刀が赤く染まったりと、その場その場で相手に勝つための力を付けていく感じは少しご都合的な部分もあるのですが、理屈を考えるとこれは楽しくない。
勢いは確かにあって、それぞれのキャラクターの思いはバシバシ伝わるのであまり「何でこうなった」を考えるとこの作品は楽しめないです。なので、あれこれ考えるのはやめました。この辺、ずっと前からそうですが、鬼滅を楽しめる人と楽しめない人との差のような気もします。
黒死牟の過去、憧れと嫉妬が入り交じった一人の男の運命でした。鬼になっても、どうしても敵わなかった。目の前で老衰で果てる縁壱は、明らかに永遠を生きる黒死牟よりも美しかった。
煉獄が言っていた、人間は終わりがあるから美しいという話。猗窩座も、黒死牟も、鬼になることを勧め、鬼殺隊はそれを拒否する。その答えが、黒死牟と縁壱のエピソードに込められていたような気がしました。太陽のように明るく美しい縁壱には、どんな鬼も日の光と同様に焼け尽くされてしまうのでしょうね。
人間と鬼との関わりを描く本作で、この過去エピソードは集大成のような役割を持っているように感じました。漫画的な見せ方としては、言い方が少し悪くなりますが、正直小説の劣化版のような印象は拭えないのですが、それでもプロットとしてはとても良いものでした。
個人的には多少冗長になってもいいので、モノローグではなくキャラのセリフで描いてくれたらもっと感情移入が出来そうなのにと、少し感じています。ただ…性質としてストーリーよりもキャラの心情がとにかくメインであるため、モノローグ以外でどう表現すれば良いのか、僕には分かりません。なのでどちらが正解とは言わないのですが、1巻からずっと引っかかっている部分で、何かないのかなあと思ってしまいます。
いずれにせよ、話自体はとても良かったです。鬼と人間をテーマとしていて、一番伝えるべきものがこの巻にあったような気もしました。
上弦は、あと肆がいますね。でも無惨までもう少し。巻数的にもちょうど良いです。このまま突っ走ってもらいたいです。