獣の六番 / 永椎晃平 1巻 感想

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15年前に起こった不可思議な事件。地下鉄の構内で数十人が死傷し、車両や設備も破壊されていた。原因は不明、現場には大きな爪痕のような痕が残されていたという。

とある僻地の学校で新任カウンセラーとして赴任した吾郷丹華(あごうにか)は校内一の不良と呼ばれる天番整(あまつがととの)と出会う。

トトノの傷だらけの体を知ったニカはカウンセラーとして、そして出世のためトトノを心配するが、そこへ生徒の悲鳴が。

駆けつけると、巨大な化け物の姿が。生徒の一人が化け物に変化していたようだった。
助けに入るトトノだが、そこへニカも駆けつけた。ニカは刀を持ち、化け物と対峙する。

ニカは、特務庁の「TR1M(トリム)」に所属する整伐師。あの化け物は耄霊と言い、負の感情をため込んだ人間から生まれる獣の姿をしたモンスターで、その耄霊を退治するために特殊な訓練を積んだ者達を整伐師と呼ぶ。

耄霊と戦うニカだが、苦戦してしまう。見かねたトトノはニカを下げ、自分が前に出る。トトノは右腕を獣の腕に変化させ、整伐師の武器以外では倒せないという耄霊を真っ二つに切り裂いた。

TR1Mより先に、人知れず耄霊を倒し回っていたトトノ。平穏な日常に憧れながらも、出現する耄霊を見逃せずに身を挺して整伐していた。しかし右腕が耄霊と化していることを知られてしまい、今後はTR1Mにも目を付けられることになる。

平穏な日常を手に入れたいが強さは本物のトトノ。対して、出世をするため結果を残したいが実力が伴わないニカ。利害は一致し、お互いの目標を達成するため二人は協力し合うこととなった。

【感想】

「星野、目をつぶって」が人気を博した永椎先生の新作。獣の腕を持つ高校生が先生とタッグを組み化け物退治をするダークバトルファンタジーです。

特筆した印象はありませんでしたが、この手のバトル物にこれまで通じてきた設定等を踏襲したオーソドックスな面白さ。すば抜けたものがいまいちありませんが、安心して読める類の作品でした。

獣の腕というのが主人公の武器。どこかで見たような気もしますがそれは置いておき、一匹狼で不器用ながら化け物を放っておけないという滅茶苦茶優しい主人公、トトノ。

 

獣の六番 1巻 1話
獣の六番 1巻 1話

途中、ニカの上司にそんな性格に図星を付かれる場面がありますが、この主人公の性格は分かり易く主人公だなあという。困っている人がいたら見過ごせないし、自分しか出来ないことなら自分がするしかないと思える、素晴らしい人間性。だからこそニカが頼りにするし、その右腕の危険性と秤に掛けても有り余る。

まあ…こういう場合はその獣の右腕が主人公の意図せぬ形で悪意を持つことも多く、これから大変そうだなあ…と何だか悲しくもなってくるのですが。

ニカは明るくて調子の良いキャラ。好みが分かれそうですが個人的には好き。整伐師ですが無能と呼ばれ、1話でヒーロー並の登場をしながらトトノに持ってかれるというへたれっぷり。まあ、それがトトノとのコンビとして上手く行く要因になるのですね。

 

獣の六番 1巻 1話

耄霊(もうりょう)という敵は人間の負の感情が具現化したもので、これも真新しさはあまりないのですが、どうやら人工的に作り出している組織がいるよう。大ボスとして立ちはだかる敵の雰囲気は1巻でも少し垣間見え、この点は面白くなりそうな予感。

絵も読みやすくテンポも良いですし、コメディ的な部分も面白いです。戦闘部分はまだまだこれからですが、見開きでの迫力は十分。正直、マイナスな部分はないのですが、逆に言うとこれといって「ココが面白い!」と言ったこの作品の特徴みたいなものが希薄なことが一番のマイナス。どこをどうすれば、と言うことが僕にはわかりませんが、全体的な印象が無難だということは拭えず、少し惜しいような作品。

それでも続きは気になりますので、今後の展開次第だと思い期待しています。

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