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ブラックな環境での仕事に疲れ果て、自らの命を絶とうと山奥まで足を運ぶ男性、定井光臣。
この世に未練はなく、お世話になった恩師に遺書を送りあとは死ぬだけ、といったところで、一人の少女が目に入った。その少女は木に紐をくくりつけていたところ。焦った光臣は少女に飛びつき、思いとどまらせようとする。
しかし、少女は自殺をしようとしていたわけではなかった。早とちりに赤面する光臣だが、その行動に心を打たれた少女。
少女は、800年を生きる八百比丘尼(やおびくに)という不老不死の女性だった。名をあえかと言い、その見た目とは裏腹の神々しさと貫禄に、緊張してしまう光臣。独りになって150年というあえかの境遇に涙し、それでもなお強く在る彼女を美しいと思った。
あえかも、光臣の優しさに触れ、素敵な男性だと感じていた。
しがないサラリーマンと、不老不死の少女、二人の山奥での第二の人生が始まる。
【感想】
ロリとサラリーマンの共同生活。超年の差カップル(?)話です。
仕事に疲れ果て、プライベートでもおそらく借金を抱えていて休む間もない光臣。遺書を恩師に送っているため、恩師の方では光臣を捜す流れになっていて、今後は第三者の介入もありそうですが、まずは山奥での二人の生活がメイン。
ある意味、それぞれが違った孤独を抱えています。長年の間、独りで生きていたあえか。数年ですが、心は何十年分ものダメージを受けたであろう光臣。それぞれが心の穴を埋められる、そんな出会いが山奥で見つかります。
基本はゆったりした日常もの。しかし導入が暗かったせいか、日々の生活が何だか愛おしく、あえかにも光臣にも幸せになってもらいたいと願わざるを得ないです。
光臣が時折見せる、心に染み着いているブラック企業での記憶。それを優しく包み込んでくれるあえか。この安らぎは何にも代え難い。光臣が一番欲しかったものでしょう。
仕事中お情けレベルでもらったただの一つのチョコレートが、一人の少女を驚くほど笑顔にさせる。そんな小さな出来事すら悲しいくらい、優しい。心の浄化作用が素晴らしい。
あえかは長年生きていながら、恋愛に関しては慣れておらず少しぎこちない感じがまた良いですね。それを光臣に見せないというのがまた良い。傍目から見れば犯罪的な二人ですが、ファンタジックな設定がそれを可能にしています。ラノベあたりでよくあるものではありますが、エロ路線だったり主人公が若すぎたりとどうもぱっとしないことが多かったのですが、今作は主人公が社会人ということもありあまり変な感じがせず、素直に読めました。
ロリでおばあちゃんという属性もある種、刺さる人には刺さるのかな。何にせよ、ファンタジックな日常ものとしては心温まる良い作品です。
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