↑試し読み、購入できます。(画像クリック)
夏休みにみつみの実家に遊びに来たみんな。
志摩が前巻でみつみに対して感じてしまった感情に引っ張られていて、ぎくしゃくしていますね。中々人間らしいところを見せてくれ始めています。
そんな自分の状況を志摩は理解していて、若干自己嫌悪に陥っていますね。
みつみはそんなことは露も知りませんが、志摩が何かうまくいかなくて落ち込んでいる状況に対して、
「ここにいる全員、入学初日にゲロした人と友達でいてくれる人だよ?」
と声をかけてくれる。確かに…と志摩も読者も思わざるを得ない、謎の説得力に志摩の心も少し軽くなる。みつみが真面目なのがいいです。
その後、ミカのシーンですが、志摩に振られたことのもやもやを誰かに…と思って選んだのがナオさん。(迎井もくっついてきたのは笑いました)
まあ迎井のことは気にせずミカは打ち明けますが、ナオも自分を重ねてうるっと…。
人に話すことは大切、話せる人がいるということもやはり大切だなと。前巻でもそうですが、自分の気持ちは意外と、自分だけじゃ整理できないんですよね。
みつみの実家編は終わり、東京へ。
志摩の家庭の話は重苦しい。これからこの話にも言及してくるのでしょうね。志摩にとって、みつみが救いになってくれると良いのですが。
みつみは志摩と一瞬付き合ってたことをみんなに打ち明けます。衝撃の事実…!
ここでもそうですが、打ち明けて初めて前に進めた感じがするのは何なんでしょうね。やはり、そういう仲間がいるというのは心強い…。
後半、風上の話になります。
要領よく何でもこなし、やることはやる、やらないことはやらない、と自分の生き方を確立しています。
そんな風上は特撮が好きなようですが、飾っていたソフビを親に処分されてしまいます。
この家庭、露骨な親のエゴ教育家庭のようで、それすら受け入れて上手くやっている風上。ただ、ソフビの件でそれが狂っていきます。
兼近の変身ポーズの物真似で、ちょっとの間違いに風上が激高します。風上はその場を外し当然周りはぽかーんですが、兼近は風上を追いかけます。
ソフビの件を伝えると兼近は同情。取り返した方が良いと熱弁しますが、風上は大丈夫だと。
このシーン、個人的にかなり良く、しっくりきました。風上はソフビを処分されたことに対してイライラしつつも、仕方ないことだと飲み込んで気にしないようにしていました。
でもそれじゃ収まらないんですよね。仕方なくはないんです。風上は、取り返しにいくつもりもないしもうどうでもいいやと、新しいの買い直せばいいやと思っていましたが、兼近の
「全然よくないだろ、同じじゃないし」
というセリフ。これに心がすっと軽くなるんですよね。風上のこの後の
「まーでもそうだよな 全然よくねえよな」
という返し。そうなんですよね。全然よくない。ただ、イライラと要領の良い自分とがぐちゃぐちゃになって、この視点に至らなかったんですよね。
その後の「取り返しにいこう」という兼近に「行かないよ」と返す風上。不思議が止まらない兼近に、
「わかってねーな それだけでいいんだよ」
と返す風上。これが風上というキャラを物語っているというか、キャラ造形を徹底しているなと感心してしまいました。そうなんです、それだけでいいんですよね。
続いて花園先生の妊娠の話になりますが、これも風上のエピソードを固める一つのシーン。
要領よく世渡り上手な花園先生でしたが、こうなってしまったからには、やるしかないと。人生、自分の思うように全てをコントロール出来るわけではないし、それを目の当たりにした風上の今後を見届けたい。
先日の能登での地震。この作品の舞台でもある町が被災し、作者さんのご家族も亡くなられたということで、あとがきは真剣に読んでしまいました。
被災地の現状は、実際に被災した方々ではないとわかりません。
どれだけ大変か、どれだけ悔しくて悲しいか、外野からは想像も出来ません。
そんな中でもこうして連載を続けていること、尊敬しますし、嬉しく思います。
軽々しく何かを言える立場ではありませんが、こうして好きな作品を自分の言葉で紹介させていただいて、少しでもこの素晴らしい作品が色んな人の目に触れたらいいなと思います。この巻も最高でした。