汐路の父親たちを殺したのは朝春だった。
狩集家の古いしきたりに則り、特定の容姿の人間を排除してきた。その一貫だった。
ルールを守ることは当然、それは犯罪ではないと心から信じる狂気に満ちた朝春が仕組んだ相続争いだった。
朝春が探していた、しきたりに害を成す情報の入ったUSBはアメジストドームの中にあった。
殺される対象だった女性の元へ訪ねる整たち。殺された親たちからのプレゼントを送られた孫たちは、古いしきたりに縛られずにそれぞれが新しい家系を築いていく。
ある雨の日、整は一人の男性に会う。彼は挙動がおかしく、どこか含みのある言葉を話つ。爆弾を仕掛けたような気がすると言い放ち驚く整だが、男の話には爆弾の在処のヒントが隠されていることに気付き、解読した。
実は、男は事故に遭いしばらく記憶が飛んでいた。不思議な雰囲気の爆弾魔との出会いだった。
怪我をして入院することになった整。隣に座る、余命の短い元刑事のおじいさんが語る過去の事件。問題を課すおじいさんに、整はその謎の解答案を提示する。整の考えに心を打たれたおじいさんは、一冊の小説を置いて消えてしまった。それは、整が見た夢だったのか…。
病院内で謎の暗号を見つけた整。おじいさんからもらった小説がヒントになっていることに気付き、解き明かしていく。そこで出会ったのは謎の長髪の女性、ライカだった。
【感想】
遺産相続の話は終結。淡々と進む殺人事件の種明かしは、探偵もののようですが、探偵ものというにはインパクトもないリアルさがあります。整がそもそも探偵というモチベーションで謎解きをしていないので、なんだか不思議な感じ。
犯人の異常さはバスジャックの時にも感じましたが、犯罪を犯罪と思っていない狂気さか凄まじい。この作品で出てくる犯人は本当のサイコパスだと思います。人間の皮をかぶった何か、という雰囲気が心の奥まで刺さります。
爆弾魔との話は短編。しかしまあ…ただ話しているだけでよくここまで謎を散りばめられるなあ…。ただ二人が会話をしているだけ、その会話に少し違和感があって、実は謎を解くヒントになっているという、天才ですかね、この作者さん。合間合間にはいつもの豆知識や整語録が挟まり、これが楽しみでもあります。
そして病院での話と、ライカとの出会い。
ライカに繋げるまでの短編エピソードですが、一つ一つがしっかり物語として仕上がっているのが凄い。ただ暗号を解かせればいいだけなのに、それまでにおじいさんの話、温室を管理する女性の話、二つのエピソードが綺麗に収まってます。
それぞれが少しほっこりして、教訓めいた内容でもあって、いつもの豆知識もあって、完成度が高すぎて怖いくらい。
4巻まで、ぶれることなく面白いです。そして何だか重要そうな人物の登場です。次巻も楽しみ。
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